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黒染め
¥3,630
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素地
¥3,630
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溶接痕
¥3,630
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銅メッキ
¥5,720
新潟県・燕市あるコーヒショップ、ツバメコーヒー店主から依頼されて開発したドリッパーです。
ツバメコーヒーは美容院に併設されたコーヒーショップで、読書家の店主がセレクトした書籍の並ぶ大きな本棚のあるカフェスペースや、燕というものづくりの街で長く使える道具を提案する雑貨スペースがあります。
今回デザインしたワイヤースケルトンドリッパー、通称ワイスケドリッパーは、ワイヤーで骨組みされ、線の集まりが形を成す、透明な円錐を形成するドリッパーです。
視認性が高く、フィルターを安定して支える最低限のワイヤーで構成されています。
始めにツバメコーヒー店主から「ドリッパーを作りたいんだけど、ワイヤーだったら金型なしで作れるの?」と相談されました。
金属製品は通常、金型を使って材料を成形します。金型製作にはコストがかかりますが、製品を効率的に生産できます。ワイヤーは金型なしで成形することもできますが、例えば角度によっては一箇所の曲げに対して複数の加工が必要になることもあります。つまり金型費がかからない分、創意工夫が必要ということです。
製法について工場と相談を重ね、開発に着手しました。
ワイヤードリッパーには、ワイヤーの本数不足でフィルターが落ちてしまうものや、スポット溶接でワイヤーが外れてしまうものがありました。
必要最低限の本数で、フィルターが安定して堅牢なワイヤードリッパーを作れないだろうかと試行錯誤し、実際にツバメコーヒー店主に試用してもらい、Sサイズを7本、Lサイズを9本にしました。
溶接方法はティグ溶接を採用しています。ティグ溶接は溶接トーチというペンのような形状の装置を使い、人の手で接合部を直接溶融して接合する方法です。スポット溶接のように接合部の一部ではなく、人の手で調節しながら全体を溶融することができるので、密接にくっつけられます。
工場というと機械をイメージしますが、ティグ溶接でワイヤーひとつひとつを人の手で溶接しているように、想像以上に手仕事が存在します。
FDを通して工場について知ったツバメコーヒー店主は、工業と工芸の揺らぎを感じ、画一的な工業製品ではなく、一種の不確定要素を織り交ぜた、工業と工芸のあわいを感じる製品にしようという方向性になりました。
例えば溶接痕タイプでは、加工痕を手仕事の痕跡としてあえて残しています。溶接痕の他、素地、黒染め、銅メッキがあります。
黒染めは金属を酸化させて黒錆を発生させることで黒く染める技法です。塗装とは異なり、個体差があり、しっかり黒く染まっているものや、染まっていない部分があるものもあります。使っていくうちに少しづつ色合いも変化していきます。
こうした工業製品としては不安定な部分があるため、一般にはあまり採用されない黒染めを、工芸的と捉えてあえて採用しました。製品の特性上、個体差がございますので、ご了承の上、お手に取っていただけますと幸いです。
以下、ツバメコーヒー店主による商品紹介の引用です。
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「ワイスケドリッパー」は、ツバメコーヒー店主がとことん考えるなかで辿り着いた「デザイン性・使い勝手・長く使える」という3つの要素に加え、経年変化を劣化ではなく味わいであるとする感性を「フォーク(民俗性)」と捉える価値観に基づき、開発したコーヒードリッパーです。
以下にその3つの要素を整理してみます。
1.デザイン性:シンプルな形状で、サーバーの雰囲気を選ばずコーディネートできて、使っていないときにも空間を邪魔することがない佇まいを持っている。たとえば、コーディネートという点で言えば、定番としてのガラスはもちろんのこと、民藝としての陶磁器や、ブロカント(古道具)、アウトドアのチタンマグなどとも相性がよく、全方位的に組み合わせることができる。つまり、新品であっても今使っているサーバーとすぐに仲良くできることも特徴のひとつ。
2.使い勝手:9本*¹のワイヤーがしっかりペーパーを保持するので日常のなかでストレスなく安心して使うことができる。ワイヤー構造そのものがリブの役割を果たし、フィルターとドリッパーの間に空間をつくることでお湯の抜けがよくなり、すっきりしたおいしいコーヒーを抽出することができる。軽量で扱いやすく、洗いやすい。
3.長く使える:陶磁器製や樹脂製のようにヒビが入ったり割れたりすることがなく、すべてのワイヤー接合部は、スポット溶接ではなく、TIG溶接による製造のため高い強度を持ち、長く使うことができる。飽きることなく使えることもまた長く使える理由のひとつ。
今回「ワイスケドリッパー」の特徴を吟味、整理するなかで、既存の言葉では説明し尽くせないことがあり、新しい言葉をつくりだす必要を感じ、「ニューフォークプロダクト」という言葉が生まれた。
「ニューフォークプロダクト」とは、様式・形状が簡素であるいっぽう、質感・触感が豊かであるもののことを言う。通常「プロダクト」であるためには、個体差がなく、経年変化しないことが前提となりますが、——ステンレス(stainless)が「錆びない」ことを意味することが象徴的だが——工業化からこぼれおちた手作業をあらためてすくい上げ、経年変化を劣化ではなく、味わいと捉えていく感性を「フォーク(民俗性)」と呼んでみたい。使用することが、作り手のあとを引き継いで、またべつの製作につながるという捉え方と言い換えることもできる。コーティングによってあらゆる経年変化を止めることができる「進化」をあえてしない、という後退にも思える「回帰」は、「ニュー」という言葉に込めた現代性を表現している。
*¹Sサイズ7本、Lサイズ9本
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サイズ : φ100*123*78mm/92g
材質 : ステンレススチール (SUS304)
日本製(燕市)